Essay
エッセイ

オジサマたちの自己紹介術

自己紹介が苦手である。

そもそも初対面の人と接すること自体が不得手なコミュ障なのだ。人前での自己紹介なんてとんでもない。それでも、恐ろしきかな、歳を経れば少しは克服されるものである。最近ではさまざまな場で自己紹介する機会が増え内容をブラッシュアップしたいとさえ目論むようになった。通り一遍の挨拶なんかでは物足りない、面白おかしく楽しい話をして聞き手に私のことを印象づけたい。

けれども実際は照れくささが先に立ち、名前とはじめましてとよろしくお願いしますを言ったらそれきり何も言えなくなる。しかしながら世には上手な人がいるもので特に年配の男性なんて。

例えば、

【S氏の自己紹介】
みなさん、はじめまして。Sです。私は平成天皇と同級生であります。誕生日は十二月十六日。クレジットカードの暗証番号は誕生日に設定しております。三井住友銀行からは、何度も暗証番号を変更するようにとの忠告を受けますが、生きているあいだに変えるつもりはありません。私の財産を使いたい人はどうぞ、ご自由にお使いください。私の誕生日は十二月十六日で、クレジットカードの暗証番号と同じです。よーく覚えておいてください。

【オオノ・カネイチ氏の自己紹介】
みなさん、お元気ですか。オオノと申します。名はカネイチ。名前の漢字は「金曜日が一等」です。「オオちゃん」や「キンちゃん」と呼ばれております。グローバル社会ですから英語でも自己紹介をしておきます。マイ・ネーム・イズ、マネー・ファースト。オーノー!

オジサマたちの自己紹介は、とてもお洒落でスマートである。

(2024年)