朝まだき湖のにおい含みつつパンちぎる手は湿り気帯びぬ
ゆるやかな坂を下ればほどけゆく水鳥たちの黒きすがたは
小石投げその水紋が遠くへとジャンプしてゆくさまを見ており
ボタン式アコーディオンが弾けたなら天使みたいに飛べるかもしれぬ
このひとを好きなままではいけないと言い聞かせつつ十五年過ぐ
カーテンのゆらぎ束の間友となる好意も敵意も高くつく世に
隣人に振りまわされてしまう癖なおらないまま初夏(はつなつ)にいる
助けたいひとたちがいるこの星に 今日もちいさく息をしている
世界じゅうの叫びをすべて受け止めて圧死できたらすばらしいのに
舟を出す口実にした毎日のすべてが消えて片恋になる
猛暑でも酷暑でもいい炎天に天ぷら蕎麦を食べたかりけり
岸にあがる支度ばかりを整えて午後のカヌーはまだ水の上
つぎつぎと夢をかなえてゆく息子 ほんとに私の息子だろうか
地図アプリためらいながら開きおり歩幅を少し大きくせねば
厚き雲の切れ間より光さしこんで湖面は徐々に空を返せり
Works
作品集