Works
作品集

連作「ターメリックミルク」

君がいるだけで幸せ二冊めのフォトアルバムを閉じる静かに
 
タクシーがタクシーにクラクション鳴らしてる世界のなかでバス停に向かう
 
冬服の釦をひとつふたつみつ厚く縢れば白みゆく空
 
豆腐屋がまだ健在の町角で高校生らはバーガー齧る
 
どれくらい悩めば答えは出るのだろう抵抗せずに見返り待たずに
 
ないものはないというのはつまりそのなんでもあるということですね
 
鮟鱇が吊るされていて北風の溜り場となる入口附近
 
容疑者が絞られてゆくプロローグ コインの裏を見てみるがよい
 
寒くても雪の降らない湖にスケート場の幟はためく
 
卯年(うさぎどし)だから兎が好きという中学生の悩みは深し
 
健康のためなら死んでもかまわない似通う雑誌が平積みにさる
 
ターメリックミルクの簡易な作り方インドのひとに教わりており
 
自転車を漕ぎ出すたとえスタンプを送りあうだけの仲だとしても
 
節分に豆をまくことなくなりて子は山頂を仰ぎ見ており
 
スプリング、ビスノイ、うらら、プランタン……世界じゅうから春をあつめて