こんにちは、鑓水青子です。
このたびは、個別指導のメール講座をご受講くださり、ありがとうございます。
これまでに作った短歌作品があるのでしたら、ぜひすべて見せてください。
楽しみにお待ちしております!
鑓水青子
鑓水青子先生
ご連絡ありがとうございます。
1か月弱前に急に思い立ち駄作を作ってみたのですが、はたしてどんなものか。プロの方に見ていただきご指導をいただければと、受講してみることにしました。
お恥ずかしいのですが、これまでのものを下記に記します。
2021年4月14日(誕生日)
久しぶり家族そろってレストラン 七十四年の思い出深し
4月15日(木)
六時半朝日まぶしい春の朝 次第に元にもどるロータリー
(ロータリークラブの対面ミーティングがはじまる)
二回目のコロナワクチン智子受け これでわが家もホッと一息
――(中略)――
5月6日(木)
一夜明け期待外れの結果聞き予期したものの落胆多し
(肩の中を検視鏡で見たら状態が予想以上に悪く腱板の縫合ができなかった)
5月7日(金)
幾たびも手術の結果振り返り欝々たるもままならぬなり
――(中略)――
5月9日(日・母の日)
久しぶりそろった子らが母の日に はずむ会話に時間も忘れ
太田邦雄
太田さん、こんにちは!
すばらしい!
毎日のように短歌を作ってらっしゃるのですね。
じっくり読ませていただきました。
いずれの歌も、日記のように綴っておられて、暮らしぶりが目に浮かぶようです。リズムもいいですね。
これらの歌に、私が手を加えることは控えたいと思います。ぜひ、このままお続けになってください。
でも、それだと講座になりませんから、最後の歌を取り上げて、短歌らしく推敲したらどうなるか、ということで進めてゆきましょうか。
まず、この日記調で詠んでくださっている作品たちは、リズムがよく、読みやすく、わかりやすい点において、秀逸だと言えます。
ですが、短歌らしさという点では、もう一歩、なのですね。
久しぶりそろった子らが母の日にはずむ会話に時間も忘れ
作者の感情や、置かれている状況が、読者にそのまま伝わってきますね。決して悪いことではないのですが、わかりすぎてしまうことで、奥行きや余韻が生まれにくくなるのです。
作者の思いを読者に想像させたり、共鳴してもらおうと思えば、わかりやすくしすぎないことも大切です。
時間を忘れて楽しんだ、幸せな空間を家族で共有した、ということは、歌のなかでは直接言わなくてよいでしょう。そういうことは、1首から醸し出すのがコツです。
なので、母の日に子どもたちが揃ったことを歌うだけにとどめましょうか。それだけでも、家族の温かみはじゅうぶん出ますから。短歌は短いので、言葉は極力、大事に使いたいです。あえて言わなくても読者に伝わる言葉は、どんどん省いてしまいましょう(もったいない気がするかもしれませんが、そこは辛抱です)。
特別な行事の日に子どもたちが揃うことに幸せを見出すのは、万国共通ですから、「幸せ」につながる表現や感情は、どんどん省いていきましょう。「ふだんは離れている家族が集うこと」にぬくもりや笑顔が伴うことは、あえて言うまでもないでしょう。「時間を忘れて楽しむ」ということも暗黙のうちに了承します。
ですから、この幸せを象徴するような光景を詠み込むか、具体的な会話(セリフ)を挟むなどして、膨らみを持たせるとよいと思います。
例えば、カーネーションが部屋じゅうに満ちている、とか、小学時代の長男は妻に肩たたき券を送った、とか、自分もふだんの3倍おしゃべりになる、とか、親子で交わした言葉、ともに過ごした思い出、家族同士が接してきた具体的な出来事やセリフを盛り込むと、関係性もわかるし、読者のこころにも響きやすいでしょう。
具体性が強まると歌の説得力が増しますから、自分の感情を説明しなくても済みます。それに、そのほうがよりよい歌ができます。
感情の説明に終始してしまう歌は、どうしても平板になるし、書かれてあること以上の余韻が生まれないんですね。情景や出来事やセリフなどの具体的な事物を描くことで、作者の気持ちが浮かんでくるように、そうして読者の共感を呼ぶように、そんなふうに作りたいです。
初回からかなり高度な推敲となり難しいでしょうけれど、じっくり時間をかけて取り組んでみてください。
最初は、31字からあふれてしまいそうになるかもしれません。ですが、とりあえず思いつく限りの単語や表現をざーっと書き出してみて、省いたり、入れ替えたり、を繰り返してみてください。
そして、質問や、疑問や、悩みなどあれば、いつでもメールしてください。
期待しながらお待ちしています!
鑓水青子
鑓水先生
そうなんですよね。自分自身ずいぶんくどいなと思いながら、一方でどうまとめたらいいのか悩んでいました。
サジェスチョンよく分かりました。最初から見直してみます。
ありがとうございます。
――(中略)――
日記調と書かれていましたが、日記はこれまでも何年もほとんど毎日書いてきていました。ただ日記を書くだけでなく短歌を作ってみたら、と思って始めた次第です。だから余計に日記みたいになったのでしょうね。
二日間ああでもない、こうでもないと考えてここまで来ましたが、少しは成長したでしょうか? 一応、二つ記述します。
母の日に子らの会話に引き込まれ
無口なマミーも破顔大笑
(マミーはわが家での母親の愛称)
子供らが母の日祝い勢ぞろい
目によみがえるわが家の喧騒
太田邦雄
太田さん、こんにちは!
いろいろと考えてくださったこと、工夫のあとが見られます。ずいぶん良くなっているので、とても嬉しいです。日記と並行して書いておられるのですね、頭が下がります。
母の日に子らの会話に引き込まれ無口なマミーも破顔大笑
子供らが母の日祝い勢ぞろい目によみがえるわが家の喧騒
どちらもとてもよいですね。【マミー】という、普段からの呼び名をそのまま使っているところもお手柄です。2首とも、家庭的な雰囲気がよく出ていて、素敵ですね。
では、直すべきところを書きます。
まず、短歌は1行で続けて書くのが一般的です。表現技法として1字空けたりする場合もありますが、基本は1行にズラズラっと書きます。
さらに句ごとにスペースを空けないで、続けて書いてしまったほうがよいでしょう。大丈夫、1行で書いても、どの部分が何句めだかはわかりますので。
基本的にとてもよい歌だと思いますので、テクニック的なことを中心に書きますね。
1首めについて。
母の日に子らの会話に引き込まれ無口なマミーも破顔大笑
【破顔大笑】は、「破顔一笑」をもじったのでしょうか。さりげなさすぎてわかりづらいので、逆効果になってしまいそうです。
短歌だけでなく、文学作品なら何でもそうですが、使い古された語(例えば慣用句や使用頻度の高い四字熟語、キャッチコピーのようなもの)は、あまり使わないほうがよいです。作品が陳腐に見えかねないので。
だから、ここは「大笑いした」とか「笑いっぱなし」とか「笑ってばかり」とか、そういうシンプルな表現にしたほうが効果的です。
2首めについて。
子供らが母の日祝い勢ぞろい目によみがえるわが家の喧騒
【母の日】はお祝いだということは暗黙の了解ですから、【祝い】は不要です。【勢ぞろい】はちょっと大げさなので、「揃い(揃う)」くらいで充分です。【勢ぞろい】としてしまうと、ものすごく大家族のような印象を受けますから。10人前後であれば、「そろう」だけで事足ります(「家族総出」などという言い方がありますが、あれもぞろぞろいる感じがしますね)。
というわけで、詠いはじめを「子供らが母の日に揃い(揃う)」とすれば、2句めまでに言い切ってしまえますから、残りの字数はゆったり歌えます。語順を変えて、「母の日に子供ら揃い」としてもよいでしょう。
それから、【喧噪】という語は、どちらかというとマイナスイメージを連想する語ですから、和やかなうるささの場合は「賑やか」としたほうがよいかな。
全体的な雰囲気や、歌の題材はとてもよいので、方向性を大きく変えることなく推敲できるとよいですね。
今回はここまでです。上記のヒントをもとに、手直ししてみてください。期待しながらお待ちしています!
鑓水青子
鑓水先生
内容よく分かりました。ありがとうございます。
少し手直しして、こんなものでいかがでしょうか? だいぶすっきりしてきたように思えますが、ご批評の程。
母の日に子らの会話に引き込まれ無口なマミーも笑いが絶えず
子供らが母の日ランチでにぎやかにたちまち戻るわが家の団らん
太田邦雄
太田さん、こんにちは!
さっそくにありがとうございます。おっしゃる通り、2首ともとても良くなっています。
母の日に子らの会話に引き込まれ無口なマミーも笑いが絶えず
こちらの歌、とてもいいですね。
これで完成といたしましょう!
おめでとうございます。
母の日に子らの会話に引き込まれ無口なマミーも笑いが絶えず/太田邦雄
いかがですか?
とても素敵な作品ですので、大事になさってください。
さて。
子供らが母の日ランチでにぎやかにたちまち戻るわが家の団らん
こちらは、もう少し推敲を重ねてゆきましょうか。
【たちまち戻る】が唐突なので、ここを変えたいです。【戻る】ということは、しばらくのあいだ家庭には団らんがなかったのだろう、ということは推測できるのですが、つながりが唐突すぎるので、別の表現に置き換えましょう。【たちまち】には、家族の本来の仲の良さも表れてはいるのですが……。
結句の【わが家の団らん】は、「わが家の団らん」と言わずに、「ああ、この家での団らんは、こんなふうなのだなあ」と思ってもらえるような情景を詠み込みましょう。
というわけで、下の句を直してみてください。上の句はいったんこのままでよいです。
【子供らが母の日ランチでにぎやかに】につづくカタチで、にぎやかに何をしたのか、にぎやかに何が起きているのか、を具体的に表してみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
鑓水青子
鑓水先生
一首めについてありがとうございます。
二首めですが、先生のおっしゃる通り「たちまち」はどうも合いませんね、私も引っかかっていました。「久々」とも思ったのですが、いずれにしても振り出しに戻りサジェスチョン通り見直しました。
子供らが母の日ランチで賑やかに自慢冷やかし思い出尽きず
ここで「自慢冷やかし」は必ずしも思い出だけで無く今の話もあるので「話しは尽きず」かも知れません。また思い出も会話の内ということでもあるので自慢と冷やかしと思い出話しに時間が過ぎた、とも言えます。
先生の講評をお願いいたします。
太田邦雄
太田さん、こんにちは!
さっそくの推敲をありがとうございます。
子供らが母の日ランチで賑やかに自慢冷やかし思い出尽きず
【自慢】も【冷やかし】も【思い出】も、抽象的なので、いずれかひとつを具体的に表しましょうか。
どんなふうに自慢したのか。
どんな冷やかしがあったのか。
家族に共通する大事な思い出とは何か。
が、分かるように書いてみください。
そして、懐かしい顔がそろったら話は尽きないということは、津々浦々で共感できることなので、【尽きず】は必要ありません。
少し難しくて厳しい推敲になるかもしれませんが、頑張って取り組んでみてください。考えるうえで迷うこと、質問などあれば、いつでもメールでどうぞ。
どんなふうに推敲されるか、楽しみにお待ちしています!
鑓水青子
鑓水先生
いろいろと考えてきたのですがどうもしっくりこないのが多く迷いました。
これでいかがでしょう?
子供らが母の日ランチで賑やかに映画批評で丁々発止
太田邦雄
太田さん、こんにちは!
ありがとうございます。
子供らが母の日ランチで賑やかに映画批評で丁々発止
ずいぶんよくなりました。
【映画批評】か【丁々発止】のどちらかをあと少しだけ具体的に描きたいです。【映画批評】も【丁々発止】も、その中身が分からないので、ふう~ん、と読み流されてしまう恐れがあり、もったいないですから。
たとえば……、
【映画批評】のほうを具体的にするなら、映画のタイトル(世の中の7割以上が知っている有名なもの=「タイタニック」や「ローマの休日」、「アナと雪の女王」などにしてください)を書くとか。
例:[「ジョーズ」批評に丁々発止]など。
また、【丁々発止】のほうを具体的にするなら、[映画批評に批評で返す]とか。
そんなふうに、映画の内容や丁々発止のやりとりの内容が見えるような表現を考えてみてください。
あと一歩ですので、もう少し粘ってみてください。とても楽しみにお待ちしています!
鑓水青子
鑓水先生
はい、それでは、といろいろ考えたのですが、これはどうでしょうか?
子どもらが母の日ランチで盛り上がりこぞって食後に鬼滅観賞
どうも鬼滅の刃の映画というのがしっくり入らないのですが、映画の話題から実際息子どもは話しがまとまり、映画館に行きました。
太田邦雄
太田さん、こんにちは!
「鬼滅の刃」を観にゆかれたのですね。
子どもらが母の日ランチで盛り上がりこぞって食後に鬼滅観賞
とても良くなっています! 推敲のたびに良くなる、というのは、なかなかレベルの高いことです。すばらしいですね。
ただし、【鬼滅】はきちんと「鬼滅の刃」としましょう(映画のタイトルなので)。それから、映画館まで行ったのなら、それがわかるように書きたいですね。【食後に鬼滅観賞】だと、自宅でDVDを観ているように感じますので。
たとえば、[子どもらが母の日ランチで盛り上がり食後に「鬼滅の刃」観に行く]では、いかがでしょう?
映画鑑賞の予定はなかったのに、食事のあと映画館へ行くほど話が盛り上がった、という雰囲気が出ると思います。
これくらいシンプルに仕上げたほうが、盛り上がった感じがよく出ますし、家族の仲の良さも出ます。
気になるところがあれば少し手を加えていただいて、そろそろ完成に近いと思います。
では、どうぞよろしくお願いいたします。
鑓水青子
鑓水先生
おっしゃる通り映画館に観に行ったことを言いたくて試行錯誤を繰り返していました。先生のサジェスチョンは正に言いたいことを全て、かつシンプルに表現しています。これでファイナルと致しましょう。
子どもらが母の日ランチで盛り上がり食後に「鬼滅の刃」観に行く
ありがとうございます。
質問ですが、先生の講座は回数、期間、歌の数の制限はどのように決められているのでしょうか?
太田邦雄
太田さん、ありがとうございます!
では、こちらで完成といたしましょう。
子どもらが母の日ランチで盛り上がり食後に「鬼滅の刃」観に行く/ 太田邦雄
とてもよく頑張ってくださいました。
おめでとうございます!
嬉しく思います。
こちらの講座は、回数や期間は決めておりません。お客さまごと、講座ごとに、まちまちなのです。私とお客さま、お互いのペースで進めていきますので、ノルマやカリキュラムは特に決めていないのです(お客さまのご都合にあわせてすすめております)。
歌の数については、1講座1首です。
――(中略)――
歌数の制限は設けておりませんが、度を超えそうな場合は相談しながらすすめています。
どうぞよろしくお願いいたします。
疑問や質問があれば、またいつでもどうぞ。
鑓水青子
鑓水先生
ありがとうございました。
――(中略)――
次の歌を何にするか決めてからメールを入れますのでよろしくお願いします。
太田邦雄