こんにちは、鑓水青子です。
このたびは、個別指導のメール講座をご受講くださり、ありがとうございます。
ケイコさんには、楽しみながら自信をつけていってもらいたいと思っています。
短歌は、音数が「57577」ということが決まっています(ケイコさんもよくご存じですね)。
そのほかには、何の決まりごともありません。短歌はただ、57577の形式にのっとっていればいいのです。季語も必要ありませんし、古典を知らなくても作れます。
けれども、ただ言葉を57577にあてはめただけでは、ひとに感動を与えたり共感を呼んだり、面白がってもらうことはできません。「音数」のほかに何も決まりごともないということは、作り手のセンスや品性、ときには人格までもが問われるのです。
ということをちょっとだけ意識しながら、はじめてみましょう。
どんな歌が出てくるか、楽しみにしています!
鑓水青子
今日締め切りの短歌どうしたら良いのやら。
とりあえず作ってみました。
よくわからず申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
立ち枯れの 紫陽花見送る
ダンボール
運び出されて 静まる古家
ナカジマケイコ
こんにちはー。鑓水青子です。
さっそく作ってくださって、どうもありがとうございます。すばらしいです!!
立ち枯れの紫陽花見送るダンボール運び出されて静まる古家
初めてとは思えない、すばらしくよく出来た歌だと思います。
3行で書いてくれましたけど、短歌はふつう、1行で続けて書くのが基本です(上記のようにね)。
――(中略)――
だから、初めは1行で続けて書いたほうがいいでしょう。
大丈夫、1行で書いても、どの部分が何句目だかは分かりますので~。
では、気を取り直して、作っていただいた歌をみていきましょう。
立ち枯れの紫陽花見送るダンボール運び出されて静まる古家
引っ越しの場面ですね。梅雨時の引っ越しは大変だったでしょう。おつかれさまでした。
今まで暮らしてきた家から荷物が運び出されていくところですね。かたわらに咲き終わりの紫陽花が立ち枯れになっている(庭の紫陽花でしょうか?)。情景がとてもあざやかに描かれていますね。
初句の「立ち枯れの」は、とても分かりやすい表現ですが、誰もが使う表現ですから、面白みが半減してしまいます。もっとケイコさんらしい表現をくふうしてみてください。どんな立ち姿か、色はどうか、たたずまいはどんなふう? 「立ち枯れの」と言ってしまうと、イメージが固定されてしまって、それ以上ひろがらないんですね。なので、ちょっと考えてみてくださいな。
2句め「紫陽花見送る」、3句め「ダンボール」、結句「古家」が、体言止めになっています。
(「紫陽花見送る」は動詞ですけど、助詞が省かれているので、体言止めと同じ感覚があります)
体言止めは、テンポをよくしてくれる反面、ブツブツとリズムが途切れる印象があります。
――(中略)――
ここをもう少しスムーズにするとぐっと良くなると思います。
――(中略)――
「紫陽花」「見送る」「ダンボール」は、ダンボールが紫陽花を見送っているのでしょうか? それとも、作者自身が紫陽花を見送って、それからダンボールが運び出されていくのでしょうか。つまり、どこで意味が切れるのか、が分かりづらいのですね。
A【立ち枯れの紫陽花見送る/ダンボール運び出されて静まる古家】
B【立ち枯れの紫陽花見送るダンボール/運び出されて静まる古家】
意味の切れ目は、どちらでしょう?
おそらくBで、「立ち枯れの紫陽花を見送りながらダンボールが運び出され、そのあとには古家が静まる」という流れでしょうけれど、「どちらの意味にもとれる」というのは、よくありません。ここははっきりさせたいところです。
以上、私なりに感じたことを書いてみました。紫陽花の花が終わるころの切ない感じや、引っ越しの荷物が運び出されたあとの虚無感や、これまでの生活が嘘のように思える家のたたずまいや、作者自身の気持ちがしんみりと伝わる歌に仕上げたいですね。これは、今のケイコさんにしかつくれない歌ですから、読者にきちんと届く歌を作りあげたいですね。
場面の切り取りはとてもいいです。「梅雨時の引っ越し」という状況を歌にする、ということだけをそのままにして、言葉を入れ替えたり、表現を変えたり、思い切って削ったり……いろいろと推敲してみてくださいな。推敲って、いちばん難しいのですけれど。
せっかく作った歌に手を入れるのは勇気が要りますが、いろんなパターンで修正してみてください。
そして、またみせてください。楽しみにお待ちしています。
質問や、疑問や、悩みなどあれば、いつでもメールしてくださいませ。よろしくお願いいたしますー。
追伸:
紫陽花は短歌にはとてもよく似合う花ですので、場面のなかに紫陽花は生かせるといいなあと思います。
鑓水青子
早速のご指導をありがとうございます。
1.立ち枯れの
表現を考えます
2.体言止め
標語みたい‥なるほど、と 笑いました!
3.ひらがなを多く
4.意味の切れ目
どちらにもとれる表現の曖昧さをなくしてはっきりさせること: はい!
5.紫陽花 は残して
紫陽花の佇まいをうまく生かしたいです。
先生がご指摘下さった箇所、素人なので、なるほど~と思ったり、言葉の操作(?)が、そうでしたか~と思ったり。推敲いたします。奥が深くて、言葉に敏感になりますね。ありがとうございます。
で、推敲してみました。
3首になってしまいました。
これ、というのがないからでしょう。
又いろいろな場面を思い出すからでしょうか。
「紫陽花」を残して紫陽花の様子を
たたずむ、のこる、ゆれゆれて
と選んでみました。
たたずむ、は見送る感じ
のこる、は愛着を表して
ゆれゆれて 、は賑やかな声に対して、と見送る様子で
色あせた紫陽花たたずむ古家から運び出されしゲンザイとカコ
あせた色の紫陽花のこる古家の戸しめて名ごりをそっと置きゆく
立ちすくむ庭の紫陽花ゆれゆれて賑やかな声今は聞こえじ
それでは
鑓水先生、よろしくお願いいたします。
ナカジマケイコ
こんにちはー。鑓水青子です。まいにち暑いですね。
今回いただいた3首、どれもいいですね。ケイコさん、さすがに「うたことば」をご存じですね。趣のある言葉の使い方をされています。
1.色あせた紫陽花たたずむ古家から運び出されしゲンザイとカコ
2.あせた色の紫陽花のこる古家の戸しめて名ごりをそっと置きゆく
3.立ちすくむ庭の紫陽花ゆれゆれて賑やかな声今は聞こえじ
1首めはほぼ完成形に近いですが、これが引っ越しの場面だとはすぐに連想しづらいです。ゲンザイとカコが運び出されるという表現は深いですね(ただ、「運び出されし」だと完全に過去形になるので、「運び出されゆく」とか「運び出さるる」とか現在進行形のほうがよいかもしれませんね。そのほうが、今まさに引っ越しを終えようとしている、という状況がより伝わると思うので)。
それから、古家に紫陽花がたたずむというだけで趣がありますから、初句の「色あせた」は必要ないかな。かえって俗になってしまう恐れがあるので。ここをシンプルにして、引っ越しの場面だということをすぐに分かるようにすれば、ぐんとよくなると思います。
2首めは、「古家の戸しめて名ごりをそっと置きゆく」の部分、リズムをほんの少しだけスムーズにすれば、完璧です。初句と2句「あせた色の紫陽花のこる」は、「のこる」のところ、下の句に「名ごり」とあって、残る感じがダブっているので修正したいです。紫陽花はそのまま残っていて、名残りは意図して置いていくんですよね、ぱっと読むとそこに少し矛盾を感じてしまうので、「のこる」という言葉は上の句では使わないほうがよいでしょう。
「あせた色の」も、全体の雰囲気からセピア色の風景が漂っているので、あえて言わなくても伝わると思います。短歌は短いですし、一本勝負だから、1首のなかにイメージをダブらせるものを入れてしまうともったいないんです。
「古家の戸」とか「名ごり」って、とても「あせた」感じが出ているでしょう? だから、紫陽花の形容詞にまで「あせた色の」って言わなくてもいいんですね。むしろここは(実際とは違うかもしれないけれど)、あざやかな紫陽花だけが残される、のようにしたほうが絵になります(絵がよければ、歌になります)。家や思い出は古びているんだけど、紫陽花だけが色をもっている、という色彩感覚ですね。何もかも、紫陽花までもがあせてしまっていたら、読み手はちょっとがっかりしますから。
「紫陽花に見送られつつ」とかシンプルにしちゃうのもいいですね。「紫陽花」のなかに「紫」が入っていますし、紫陽花を知らないひとは滅多にいないので、とくに形容詞がなくても色のきれいな紫陽花を思い浮かべてもらえます。
3首めは、「立ちすくむ」とあって「ゆれゆれて」だと、立ちすくんでいるのにゆれているの? と不思議に思いますから、情景が浮かびにくいです。厳密には分かりますけれど、ぱっと見たときに違和感があるんですよね。散文ならこれでいいのですけれど、ひとつの名詞に動詞や形容動詞が複数あると、短歌ではくどく感じてしまいます(並列にするなら話は別ですけどね)。
下の句は、ご家族の声でしょうか。男の子が3人ですものね、賑やかだったでしょうね。でも、この歌だけを読むと、残念ながらせっかくのご家族の様子があまり伝わってこないんですよね。「賑やかな声」だけポンと出されると、近所の公園で遊ぶ子たちかな、とか(だから今は夜なのかしら、とかね)。子どもが成長したからかな、とか。読み手に「たぶんだけど、こういう状況? でも本当のところは分からない」っていう読みの曖昧さを与えてしまうんです。それは、よくないですね。
下の句も、よく練られていてよいのですが、「賑やかな声今は聞こえじ」って、歌の調べというよりも、慣用表現っぽい節(言い回し)なんですね。これがハマればかっこいいですが、短歌らしさを出すなら、「今は聞こえぬ賑やかな声」とか「賑やかな声いまは聞かれず」とかですね。流れるような韻律にすると、うたっているようになります。
難しいですね。つくづく、短歌って難しいのですよ。どうでしょう? どれを基に作り上げていくのがいいでしょうね? 私は、2首めがよいなあと思いますが、いかがでしょうか?
それでは、またメールしますね。悩んだり迷ったり、分からないことがあれば、何でも相談してください。
よろしくお願いしますー。
鑓水青子
細やかなご指導をありがとうございます。
字数の少なさゆえの短歌、作り方、考え方が少しですがわかりました。難しくて、奥深いものですね。
1.色あせた紫陽花たたずむ古家から運び出さるるゲンザイとカコ
この句はこれでおしまいにいたします。ありがとうございます! 何だかとても気に入っています。
「運び出さるる」良いですね。
2.あせた色の紫陽花のこる古家の戸しめて名ごりをそっと置きゆく
を推敲して2~3日中にメールしたいとおもいます。
紫陽花に色を持たせて‥なるほど
言葉選びが難しく、それが楽しいのですね。
名ごりを強調したくて言葉を重ねましたが、それは逆効果
あたまをめぐらせます。
今日はゲリラ豪雨もありました。大丈夫でしたか?
いよいよ夏本番ですね~梅雨明けも近いのでしょうか。
先生、細いから体調にはくれぐれもご留意くださいませ。
ナカジマケイコ
ありがとうございます!
短歌の楽しさを味わっていただけているといいなあと思っています。
1.色あせた紫陽花たたずむ古家から運び出さるるゲンザイとカコ
いいですね。1首できましたね。ケイコさんの作品ですから、大事にしてくださいね。
それから、短歌1首のことは「句」と言わず、「歌」と言います。57577に区切ったときに、それぞれの部分を「何句目」という言い方はしますけれども……。ちょっと紛らわしいのでご注意ください。俳句だと、1句、2句と数えて「この句について~~」と言って正解なんですけどね。短歌は1首2首と数えて、「この歌については~~」と言います。
2.あせた色の紫陽花のこる古家の戸しめて名ごりをそっと置きゆく
こちらは楽しみにお待ちしています。短歌って、つくりながら行ったり来たり、削った言葉を戻したり、また削ったり、違う言葉に置き換えたり、やっぱり元に戻したり……という作業がたくさんあるんですよね。
けっこう体力使いますが、めげずにお付き合いください~。ぜったいいい歌に仕上げましょうね!
質問などあったら、なんでも訊いてくださいませ。
よろしくお願いしますー。
鑓水青子
仮名遣いのご教授をありがとうございました。
(※ここでは略していますが、ひとつ前のメールに仮名遣いのことを書きました)
旧仮名遣い、個人的にとても好きです。が
使いこなせる自信はなく
鑓水先生の意見に100%納得です。先生はそれを実践されてますしね。
紫陽花の濃いあおゆれる古家の戸しめて名ごりをそっと置きゆく
紫陽花のいろ濃くゆれる古家の戸しめてなごりを置いてゆく我
紫陽花に見送られつつ古家の戸しめてなごりを静かにいだき
少し絞ってみました(?)
ナカジマケイコ
こんにちは、鑓水青子です。
懲りずに作ってくださって、ありがとうございます。とても嬉しく思っています。
3首とも、いいですね。とくに1首めがとてもよいと思います。
紫陽花の濃いあおゆれる古家の戸しめて名ごりをそっと置きゆく / ナカジマケイコ
1首全体の調べもよいですね。とても短歌らしい韻律です。漢字とひらがなのバランスもとてもよいと思います。
これで仕上げましょう! 素晴らしくよく出来ました。
おめでとうございます!!
仮名遣いについては、ちょっと厳しいことを言っちゃいましたね。
ケイコさんの作風なら、新仮名が断然よいと思います。
では、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
鑓水青子
一首完成ですね。ありがとうございます!
エッセイを書くようになって、日常生活の中での言葉の使い方、文章を書く時の言葉の選び方に少し神経が回るようになって来たところです(やっと)
短歌もエッセイに通ずるものが多いですね。
文章を書く基本は同じということでしょうか。
短歌の基本的な考え方
さわりだけでも学ぶことが出来て嬉しいです。
短歌のたのしみを教えて頂き、新たな視点を持つことが出来ました。感謝です。
鑓水先生、お忙しくご活躍ですね。
くれぐれも体調に気をつけてお過ごしくださいますように。
またお会いできることを楽しみにしています。
ありがとうございました。
ナカジマケイコ